損益計算書の構造
Biogen Inc.、連結損益計算書の構成
レポートに基づく: 10-K (報告日: 2021-12-31), 10-K (報告日: 2020-12-31), 10-K (報告日: 2019-12-31), 10-K (報告日: 2018-12-31), 10-K (報告日: 2017-12-31).
- 売上構成の変化と安定性
- 2017年から2021年までの期間において、製品ネットの収益に占める割合は概ね均衡しており、80％前後の安定した水準を維持している。しかしながら、2021年にはやや増加し、80.56％となっていることから、コア事業の収益依存度が高まっていると推察される。一方、抗CD20治療プログラムは、割合が着実に増加傾向で推移し、総収益に対する寄与度が高まっていることが示唆される。その他の収益の割合は2018年以降で比較的安定しているが、同時に全体の収益構成に占める割合は小さく変動が少ない。
- 収益性の動向と影響要因
- 売上総利益率（粗利益率）は2017年から2020年までおおむね86％前後を維持していたが、2021年には80.79％に低下している。これは売上原価比率の増加に起因していると考えられ、特に2021年の売却原価比率の増加が影響しているとみられる。営業利益率は2019年に最大の48.98％を記録した後、2020年と2021年には減少し、2021年には25.87％に落ちている。これは、研究開発費や販売・一般管理費の増加、その他の費用増加が要因として挙げられる。特に2021年において研究開発費と販売・管理費が相対的に増加しており、利益率に悪影響を及ぼしている。
- 研究開発費の動向と影響
- 研究開発費の収益に占める割合は2018年から2020年まで一時的に減少傾向にあったが、2021年には増加している。2020年には特に大きな増加が見られ、2021年にも費用負担が継続している。これにより、当期純利益への影響も顕著であり、2021年の純利益比率の低下に寄与している可能性が高い。研究開発投資が今後の事業展開において重要な役割を担う一方、短期的には利益率の圧迫要因となっている。
- その他の経費と利益項目の変動
- 売却に伴う利益および偶発対価の測定による利益の割合は、期間を通じて変動しているが、2021年には売却利益の提供が示されているものの、他の利益項目は一時的な増減にとどまっている。投資の利益（損失）は2020年に顕著なプラスを記録した後、2021年には大きなマイナスに転じており、資産運用の変動性が反映されている。法人税費用の割合は年々減少している傾向から、税負担の軽減や税戦略の変化を示唆している。
- 最終純利益と企業価値への影響
- 2020年までは純利益比率が高く推移していたが、2021年には大幅に減少している。具体的には、バイオジェン株式会社に帰属する当期純利益は2019年の40.96％から2021年には14.17％まで低下している。これは、総合的な収益性低下及び経費増加に起因するものであり、企業の財務基盤が一時的に圧迫されている状況を反映している。税引後の非支配持分の比率も低迷傾向にあり、株主に帰属すべき純利益の減少が見受けられる。
- 結論および今後の展望
- 全体として、売上の主要構成要素は安定しているものの、2021年の財務状況では、売上総利益率や営業利益率の低下、研究開発支出の増加が収益性に負の影響を与えていることが示されている。今後は、コア事業の収益性の維持・向上と研究開発投資の効果的な管理が重要となると考えられる。財務の安定性確保に向けては、コスト管理と投資劣後の利益獲得手段の多角化が求められるだろう。